時間を無限に使えるならどれだけでもゲームのクオリティを上げることができますが、現実にはそうはいかないですよね。
時間が限られている時こそパレートの法則を意識しましょう。
今回はパレートの法則をゲーム制作に応用する考え方について解説していきます。
- なかなかゲームが完成しない
- ゲームを完成させられなかった
- いつもスケジュールがギリギリ
こういった経験のある方は是非読んでみて下さい!
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パレートの法則とは
パレートの法則はマーケティングの世界でよく登場する用語です。
「2:8の法則」「20:80の法則」と呼ばれることもあります。
上記ページからの引用です。
パレートの法則とは、ある事象の2割が、全体の8割を生み出しているという状態を示す経験則である
法則といっても明確な根拠があるわけではなくて、様々なところに当てはまったという経験から、法則として扱われるようになったものです。
例えば、以下のようなことが現実に起きています。
- ゲーム会社の売上の8割は、全タイトル中の2割による売上
- ソシャゲの売上の8割は、課金ユーザー全体の2割による売上
- 会社の売上の8割に貢献しているのは、全社員のうち2割
- プログラム処理時間のうち80%は、コード全体の20%によって発生する
多少数字がずれたりはしますが、日常の様々なところにあてはまります。思い当たる例もあるのではないでしょうか?
そしてこのパレートの法則は、ゲーム制作にも応用できます。
100点を目指すのをやめる
パレートの法則を取り入れる時の考え方として、まずは100点を目指すのをやめる。完璧主義をやめる必要があります。
100点を確実に取りに行こうとすると、取りこぼしがないように試験範囲全体を覚えなければいけません。
しかし80点を目指すなら、重要ではないところを切り捨てても問題ありません。
勉強せずに50点取れるとして、100点を取るのにかかる勉強時間が10時間とするなら、80点を取るのにかかる勉強時間はおおむね2時間です。
今回は10時間の勉強時間で、5科目の合計(総合評価)でより高い点数を取る必要があるとしましょう。
1科目で100点をとることに10時間を使ったことで残り4科目が50点になり合計300点
5科目全てを2時間ずつ勉強して80点ずつ取って合計400点
50時間使えるなら全科目で100点を目指せばいいかもしれませんが、現実にはそうはいかないことが多いでしょう。
テストのような例では、一部分に集中するより時間を分散させた方が効率が良いことを何となく理解している人も多いはずです。
ところがゲーム制作においては、部分的に100点を取ることに集中して時間をかけすぎてしまう傾向があります。
部分的にでも100点を取ることは素晴らしいことですが、全体としての完成度を上げたいなら考え方を見直す必要があります。
全体を80点に底上げする
ゲーム制作の場合も同様に、今回はエフェクトを例にとってみます。
テストと違って100点に具体的な基準がないですが、今回は制作する人の持っている技術を100%発揮した状態とします(限界以上を目指せば120点も可能)。
1つのエフェクトを100点で制作するなら10時間、80点なら2時間とします。
エフェクトの制作時間は10時間しかないとしましょう。
100点の炎魔法エフェクトが実装されているけど、他のエフェクトが一切入っていない
以下がそれぞれ80点のクオリティで実装されている
- 斬撃エフェクト
- 打撃エフェクト
- 回復エフェクト
- 炎魔法のエフェクト
- 敵を倒した時のエフェクト
時に100点の炎魔法エフェクトがきっかけで高く評価されることはあります。
しかし基本的には、エフェクトが入っていないところ(0点)のような悪い部分にプレイヤーの目は向いてしまうものです。
どちらもかけた時間は同じなのに、前者は手抜きと思われてしまう可能性が非常に高いです。
ゲームを完成させるコツは、全ての機能を80%のクオリティで一通り実装することです
ゲームが完成しない人ほど、特定の機能を完璧に作ることにこだわりすぎています。
まずは80%のクオリティで良いので一通り作り終えて、重要なところから順番にブラッシュアップしていきましょう。
α版・β版・マスター版
ゲーム会社ではゲーム発売までの段階をα版・β版・マスター版に分けていることが多いです。
α版
α版の定義は会社によって異なるかと思いますが、ここではゲームの基本機能が一通り遊べる状態としておきます。
この段階では、グラフィックなどの素材は仮のものを使っていて、バランス調整などもされていない状態です。
ゲームシステムの方向性が間違っていないかどうか、遊んで面白いものになっているかどうかなどを確認します。
β版
ゲームに必要な全ての機能が一通り揃っている状態です。
グラフィック素材などもそのままリリースできる状態のものが入っています。
一般向けに公開されて実施しているオープンβテストは、このβ版を使用しています。
実際にはオープンβテストであってもバグだらけでは困るので、社内で実施するクローズドβテスト(β1版)と、オープンβテスト(β2版)のように分けていることが多いでしょう。
マスター版
完成版です。
実際にはマスター版が出来てから再度バグチェックなども行うので、ここで問題が発覚すれば発売までに修正が入ることもあります。
β版の必要性
なぜマスター版の前にβ版を作る必要があるのでしょうか?
β版は全ての機能がおおむね80%のクオリティで実装されています。
今まで説明してきたパレートの法則に基づくなら、β版を作るのに1年かかったとしたら全機能を100%のクオリティにするには5年かかってしまいます。
実際のところ発売されているゲームで隅から隅まで100点満点だと感じるようなゲームなんて無いですよね。
β版としてまずは完成させた上で、テストの結果に基づいてブラッシュアップしなければいけない所を見定めます。
そして重要なところだけ85点、90点とクオリティを上げていきます。
このようにしてゲーム会社各社は、80点クオリティの部分を残しながらも完成度の高いゲームとして評価されるものを作り上げています。
一部分はクオリティが凄く高いのに未完成の部分が多いなど、時間配分に失敗してβ版をうまく作れていないと発売の延期に繋がってしまいます。
これはゲーム会社の話でしたが、個人でゲームを作る場合でも同様の考え方を持っておくと完成させやすいでしょう。
大切なのは完成イコール100%ではなく、80%で完成と言い切っても遊ぶ人は気にせず受け入れてくれる点です。
80点以上を目指すべきところ
ここまで説明した内容は限られた時間で全体として完成度の高いゲームを作るならという話です。
例えば自分の技術をアピールするための作品を作るなら、ゲーム全体としての完成度を高めることよりも特定の技術にフォーカスして部分的にクオリティを追求することは全く問題ありません。
また、ゲームの中で最もアピールしたいポイントやプレイヤーの目に多く触れる場所には時間をかけるべきです。
重要なのは、何が大切で、どこで手を抜いても大丈夫なのかを見極めることです。
そしてここでもパレートの法則です。全体の中で重要なのは2割だけです。
2割に絞ってクオリティを上げる事こそ、完成度の高いゲームとして評価されることに繋がります。
2割はゲームでアピールしたい押しポイントなので、押しポイントは全体の中でも2割程度に留めておくのが効率的という考え方になります。
まとめ
パレートの法則は最初に説明した通りゲーム制作に限らず、日常生活のあらゆるところで使えます。
今まで完璧を目指しすぎていたと思い当たるところがある人は、ぜひ一度パレートの法則を意識して行動してみて下さい!